皆様
この度は、日本情報教育学会のホームページへお立ち寄りいただきまして、まことにありがとうございます。日本情報教育学会の発起人兼会長を務めさせて頂きます加納寛子と申します。
学会費、投稿費、掲載費全て無料の学会は、日本でははじめてなのではないでしょうか?
「日本では」と申し上げたのは、既にイギリスでは20年以上前から、UK Education and Research communitiesには、学会費、投稿費、掲載費全て無料でジャーナルを発行する学会が複数登録されているのです。インターネットが普及しはじめた頃、電子ジャーナル発行をメインの活動としてMLだけで運営していく教育系の学会が立ち上げられ、20年経つ現在では、毎年全国大会も開催されるようになっています。20年以上前からイギリスでは、税金による大学運営費が徐々に乏しくなり、企業からの寄付に依存するような体制に大学改革が進みました。研究者の研究費は、産業界と密接な関係のある学問分野では豊富になりました。しかし、知名度の高い某大学であっても、教育関連の研究者の個人研究費はほぼ0となりました。学会参加費は、その都度大学やEUのファンディングに申請し、獲得されているようです。そのような背景の中、心理学や教育学に関する研究者の間で、学会費、投稿費、掲載費全て無料でジャーナルを発行する学会が立ち上げられたのです。
イギリスでは、今でも、ホームページを立ち上げていない学会も多く、全国大会を開く場合も、開催校の先生のホームページにPDFがUPされて告知されたり、PDF告知すらなく、会員にMLでアナウンスされるだけの場合も少なくありません。会費はどの学会も基本的に無料です。学会誌に関しては、投稿料と掲載費をとっている場合と全て無料の場合とがあります。
イギリスでの前例(学会費、投稿費、掲載費全て無料でジャーナルを発行する学会)では、世界中から投稿者を集めています。本学会は、イギリスの同様の学会のように世界中から会員を呼び込むことも難しいと考えていますが、太く短くではなく、細く長く、会員一人一人の手で回していける、持続可能な運営を目指していきたいと思います。
イギリスの類似学会では、Information Literacy Awards 等、情報教育に関連した学会賞も設けられており、お金をかけることなく、楽しく研究のできるネットワークが構築されています。
結局の所、イギリスのものまねか、と思われるかも知れませんが、学ぶこと=まねぶこと、と思っていますのでものまねで結構、日本でもイギリスのように本学会を定着させていきたいと考えています。
また、あえて言及するほどのことでもありませんが、情報科学の研究と、情報教育の研究は、基本的に別物です。情報科学の研究者は、世界中の情報教育の研究者の間で有名なInformation Literacy Awardsすら知らない研究者もいるのではないでしょうか?
プログラミングができることとプログラミング教育の研究は別物です。
数学の研究者で数学のノーベル賞ともいわれるフィールズ賞を知らない人はいませんが、歴史の研究者の人で、フィールズ賞を知らない人がいました。
少し領域が違えば知らないことばかりでしょう。「無知の知」を知るものの方が、知恵者と自認する相手よりわずかに優れているというソクラテスの指摘の通りです。
イギリスでは5歳児から学校教育の中でプログラミング教育が実施され、塾に通うことなく7歳ぐらいまでには、およそのプログラミングの基礎を学びます。しかし、ホームページを開設せずとも世界中から会員を集め、学会費、投稿費、掲載費全て無料でジャーナルを毎年発刊するという学会運営が安定的に継続できています。未だにオートマチック車は高級品で、マニュアル車が普通といった、レトロなところも残っているイギリスらしいといえます。まさに古きを温め、最先端の教育を進めている国と言えるでしょう。
本学会も、コンディヤンクの公教育の理念、モンテッソーリ―の感覚教育の理念、ピアジェのスキーマ理論、等々、多くの人々に学び継がれた古典を温め、かつ新しい情報教育を見出していきたいと考えています。このような理念に賛同いただけましたら、ご入会ください。
2017年4月10日 日本情報教育学会 発起人兼会長 加納 寛子